携帯電話や電子手帳でも持っていればやり易かったけれど、そんな高額の物はまだまだ高嶺の花の時代です。
普段持ち馴れないビジネスバッグの中身は筆記用具と週刊のマンガ雑誌しか入っておらず、中身を見られるのも憚られます。
財布すら持ち歩かないのでポケットに入っている物と言えばハンカチをぐらいしかありません。
あんまり待たすのも気が引けるのてハンカチを出して即興のプレゼンテーションを始めました。
『玉村さん、5分だか私の話を聞いて下さい、
私何十年もハンカチの営業をやってきましたが、こんなハンカチには初めて出会いました。
こんな素晴らしい商品を是非玉村さんにも知って頂きたくて本日会社を出て真っ先にお伺い致しました。
このハンカチはですね、今までとは明らかに違う点が三つございます。
一つめは・・・』
てな感じで嘘八百を並べてまさに魔法のハンカチのごとくプレゼンテーションが終わりました。
今でこそテレビの通販番組の真似みたいですが、もちろんそんな物の無い時代です。
以前に勤めていた会社で泊まりがけの新人営業研修を三週間ほど受けた後はひたすら外回りを続けていたので緊張や恥ずかしさはカケラも無く、必死になり時間も守ってやり遂げました。