喫茶店で数時間を過ごし、アストロ球団も全巻読み終えた頃にはすでに16時を回っていた。
気が付けばみんな脱いでいたスーツを身に付けてトイレで髪型を整え終えていたのだ。
そしてリーダーが会計を済ませてくれて『じゃあ行くぞ!』の掛け声をあげ、上野公園にほど近い駅の出口付近で営業を始めた。
仕事の流れは
①都会に不慣れそうな若者にアンケートと称して声をかける
②映画は好きか、どのくらいの頻度で映画館に行くかを聞く
③今の映画料金が高いかを説明(当時は確かロードショーが一本千円)
④三千円で10本観られるチケットを紹介する
⑤彼氏や彼女と観に行く場合は人数分のチケットが必要だと知らせる
このようなセールストークで大抵は2セット以上のお買い上げだ。
これを2、3時間続けて終了。
売れる者は10セット以上の猛者もいる。
もちろんボウズ(売り上げゼロ)もいるので、世間知らずの地方出身者に何人出会えるかが最も重要なのだ。
確か私は初日に7セット売り上げて、事務所に戻ってから所長に誉められたので良く記憶しているのだ。